最後の恋はアナタの隣で
その視線に気が付いたリンは、一瞬ハッとしたような表情を見せ、鞄を持ったまますぐさま私達の所に駆け寄ってきた。


「ミサキ! 何してんの!」

慌てたような声をあげ、ミサキの腕を掴んでグイッと引っ張るリン。


ミサキは足を踏ん張ってそれに抵抗したものの――病弱なミサキがリンに敵うはずもなく、いとも簡単に引きずられていく。


泣きそうな顔で私を見つめたミサキは、教室から連れ出される寸前、「涼ちゃんごめんね……」と呟いた。


……胸がチクチクと痛みだす。


でも、その痛みが何なのか自分でもよく分からない。


得体の知れない感情を抱えたままベランダに行って雑巾を取ると、洗面台で濡らして軽く絞ってから自分の机に戻り、力いっぱい落書きを擦った。
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