最後の恋はアナタの隣で
「仕方ないなぁ。じゃあ今日は早めに終わろうか」

ゲンナリしてる私に、優しい千秋はそう言ってニッコリ微笑んだ。


「ほ……本当に良いの? 春樹さんに言ったりしない?」

「言わないよ。でも、その代わり明日は三十分延長ね」

「え゛……」

「冗談だよ」

クスクス意地悪く笑った千秋はテーブルの上にある参考書を閉じ、ソファから腰をあげてバーカウンターに向かう。


そして、バーカウンターの中に入った千秋は、グラスがたくさん並べられている棚から長いグラスと短いグラスを取り出し、何かを作り始めた。


その“何か”がカシスオレンジだって気付くまでに、私はそう時間はかからなかった。


赤みの強いオレンジが揺れる長いグラスと、茶色い液体が少量入れられた短いグラスを持ってボックス席に戻って来た千秋は、案の定、長いグラスを私に差し出す。
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