最後の恋はアナタの隣で
考えたところで答えなんて見つけ出せるわけがないその問題を、無意識に頭の中で巡らせる。


ずっしりと重い心を抱えたまま、助手席の扉に手を掛けると――着実に迫って来てる“その時”に少しでも抗おうと、私は出来る限りゆっくり車から降りた。


――そんな私に向かって。


西の空に半分ほど沈んだオレンジ色の太陽を背に、数歩先で立ち止まって左手を差し出している春樹さんが見えた。


それがこれからも続く愛情の証なのか、最後の優しさなのかは分からない。


分からないけど――ようやく見れたいつもの春樹さんの姿に、時間稼ぎをしようだなんて考えは一瞬で吹き飛んでしまった。


自然に笑みが零れ、春樹さんに駆け寄りその手を握ると、春樹さんは私の手を引いて堤防に沿って歩き出す。
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