最後の恋はアナタの隣で
きっと、本当に“俺自身の為”なんだと思う。


責任というやつを重んじる千秋は、経営者としての自分に課せられた責任を果たそうとしているんだと思う。


そんな千秋に対して、私はそれ以上何も言う事が出来なくて――千秋が開けてくれた扉を抜け、店内に足を踏み入れた。


続いて入って来た千秋の姿を見たキャスト達は、前と全く同じ反応を見せて千秋に群がる。


その光景にやっぱり違和感を抱きながら、バーカウンターの中でこっちに背を向けてグラスを洗っていた春樹さんに目をやると――…


「勉強お疲れさん。大丈夫か? 疲れてないか?」

…――顔だけ振り返って笑顔を見せる春樹さんに、胸が痛んだ。


あれだけの過去を背負っていても、こんな風に優しい笑顔を他人に向ける事が出来る春樹さん。


その強さを得る為にどれほど苦しんだのか考えると、胸を痛めずにはいられなかった。
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