最後の恋はアナタの隣で
どんなお客さんと喋って、どれくらい忙しくて、他の女の子がいつ帰ったのか――自分が春樹さんと喋ったのか、それすらも分からない。
……私が覚えてるのは“あの事”だけ。
脳内に鮮明にはっきりと思い出せるのは、“あの事実”だけ。
――…春樹さんとユカリがアドレス交換してたっていう、思い出したくもない現実だけ。
「あとはお願いね、春樹」
「分かりました」
私と春樹さんを置いて先に帰って行くママの後ろ姿に、「お願いだからまだ帰らないで」って、縋るような気持ちで心の声を投げ掛けた。
だけど勿論、心の声なんかでママが留《とど》まってくれるはずもなく、
「涼、明日学校休みだよな?」
二人きりになった空間で私に向けられる――今は一番聞きたくない、春樹さんの声。
……私が覚えてるのは“あの事”だけ。
脳内に鮮明にはっきりと思い出せるのは、“あの事実”だけ。
――…春樹さんとユカリがアドレス交換してたっていう、思い出したくもない現実だけ。
「あとはお願いね、春樹」
「分かりました」
私と春樹さんを置いて先に帰って行くママの後ろ姿に、「お願いだからまだ帰らないで」って、縋るような気持ちで心の声を投げ掛けた。
だけど勿論、心の声なんかでママが留《とど》まってくれるはずもなく、
「涼、明日学校休みだよな?」
二人きりになった空間で私に向けられる――今は一番聞きたくない、春樹さんの声。