最後の恋はアナタの隣で
その声に春樹さんの顔を見ないまま、私は「はい」と短く答えた。


体の右側に春樹さんの気配を感じる。

コツコツと床を鳴らし、徐々に近付いてくるのが分かる。


その距離が縮まる度に……


……嫌って思うのに、どうして私はこんなにもドキドキしてるんだろう。


こんな事になるなら、早退すれば良かった。

むしろ、出勤なんてしなければ良かった。

それ以前に……ユカリからの一日体験入店の誘いを断っておけば、こんな思いをしなくて済んだのに。


「じゃあ、俺の家に来ない?」

「……」

私のすぐ傍に立って優しい声を落とす春樹さんに胸が痛んだ。


……やっぱりそうじゃん。

家に誘うって事は、処女を奪うのが本当の目的なんじゃん。
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