王子な女好き
「やーざーわぁー!!」
ヤザワ。
多分この男のこと。
走っている女をガン見してると、ふいに目が合ってしまった。
目を逸らす前にその女はあたしに近づいてきた。
「あのー、赤と白の海パン履いた男、走ってきませんでした?」
「あー、あの人なら走ってもと来た道戻りましたよ?」
自分で言うのもなんだけど、演技、超上手だったと思う。
その女は苦笑いを浮かべながらお礼を言って、走って戻って行った。
「………もう行きましたよ?」
「ぶぁーっ!! はぁ……」
息を噛み殺していたらしく、大きく深呼吸をして喉を押さえた。
そして彼は「ありがとう」と微笑んだ。