王子な女好き
 
 
「やーざーわぁー!!」


ヤザワ。

多分この男のこと。


走っている女をガン見してると、ふいに目が合ってしまった。


目を逸らす前にその女はあたしに近づいてきた。



「あのー、赤と白の海パン履いた男、走ってきませんでした?」

「あー、あの人なら走ってもと来た道戻りましたよ?」


自分で言うのもなんだけど、演技、超上手だったと思う。


その女は苦笑いを浮かべながらお礼を言って、走って戻って行った。



「………もう行きましたよ?」

「ぶぁーっ!! はぁ……」


息を噛み殺していたらしく、大きく深呼吸をして喉を押さえた。


そして彼は「ありがとう」と微笑んだ。
 
< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop