バラバラ死体とシャルウィーダンス
「おはようございます」
頭を上げると、
「………っ」
目の前に、壁に掛けられた屍があった。
「あら、死体は見慣れてる筈でしょう? 警察なんだから」
「宮崎くん………」
「誰の話ですか」
スッパリと言い返され、何も言えなくなる。
目の前に居るのは間違い無く宮崎クロエだ。
冷たい侮蔑の篭った瞳で、冷ややかに見下ろしてくる。
「あなたは誰?」
「俺のことはどうでもいい。今貴女に訊きたいのは別の事だ」
「何………?」
私の手足には枷が付いており、身動きが出来なかった。
ちょうど数日前の、この女性の様に。
宮崎クロエはにっこりと笑った。
「逆吊り、好きですか?」
「…………あまり好きじゃないから、出来れば勘弁して欲しいわね」
天井から垂れ下がる鎖が、私の足枷に繋がっているのが見える。
つまり、今のは「逆吊りしますから、覚悟して下さいね?」という意味だろう。
「こんな状況でよく落ち着いて居られますね。勘に障ります」
「いえ、実は内心ビクビクしてるのよ?」
「あははははははっ」
「なぁに?」
宮崎クロエは、手で頭を押さえ、狂った様な笑い声を出した。
その手にナイフが握られていることに今更ながら気付いた。
だが私はなんとか平静を装った。
「やっぱりあなたが犯人だったのね」
「そうですよ。ほら、また見てもらってるんです」
ナイフで示す先にある、三脚で支えられたカメラがあり、私に向いていた。
宮崎クロエが立っている場所は、カメラのフレームから外れた場所である。
カメラの後ろに机があり、こちらに背を向けたパソコンと、カメラに繋げられたマイクが置いてあった。
「成程? 次は私がダルマになるの?」
「よく知ってるんですね。……―僕は一年前に台湾で此れを見たんです」
「気になるわね」
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