バラバラ死体とシャルウィーダンス


「時間稼ぎですか、こざかしい」

「お互いさまでしょう?」

「確かに、そうですねぇ」



クックッ、と喉の奥で笑う宮崎クロエ。
明らかに先程見た彼とは別人だ。


欝病、ボーダー、そして乖離性同一性障害。


多重人格。



「僕の友人ね、女の子なんですが、ある日俺を誘ったんです、台湾に。
俺は何と無くオーケーしたんですよ。

で、台湾着いてあの女、服屋行きたいとか言い出して。


服屋ですよ?
普通観光地とか色々有るじゃないすか、行く所って。

あはは、変ですよね?
服屋ですよ?


あはははははははははは!」

「…………」



たがが外れた様に喋り出した宮崎クロエを、私は黙って見ていた。


目は宙を見たまま焦点が合わず、口元は歯を剥き出した笑みを形作っている。



「で、あの女、服屋でこれどう? 可愛い? って訊いてきてさ、―――それがぜんっぜん似合わねーの。
俺ぁ無関心にああ、うんって言ってさ、あの女はそれを見てむくれてやんの。あははっ。

で、試着してくるっつって試着室行って、俺待ってたんすよ。

一時間待ってさ、なげぇじゃんよ!
ムカついた俺は試着室行ってカーテンをバッ!と開けたの」



段々平静さが無くなり、脂汗を滲ませた額を拭おうともせず、宮崎クロエは喋り続ける。


私は机より更に奥にある壁に、掛けられた時計を見ながら、



「ずいぶん大胆ね」



と言った。




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