花が咲く頃にいた君と
東向日の癖髪、ふあふあと揺れている。


それを後ろから眺めた。


握り締めた原稿用紙。



並んだ文章はたった三行。


それでもちゃんと心から反省して書いた。



それを手にオレンジ色に満ちる廊下を歩いた。



「東向日は何て書いたの?」


東向日の手に握られた原稿用紙。


沈黙に耐えきれず聞いてみた。



「君たちを止められなかったことと、」



考える様に、斜め上を眺める東向日。


ちらりと見える口の動きに釘付けになった。


「それと、冬城さんにケガをさせたこと」



足が自然と止まった。


東向日もあたしより数歩前で立ち止まって、こちらに振り返った。


「あたしが悪いんだから、東向日がそんなん気にしなくていい」


泳ぐ瞳、自然と下を向いていく。

顔が赤くなるのが自分でも分かった。


「僕のせいだよ。ちゃんと止められてたら、冬城さんがこんなケガしなくて済んだよ」


気付いたら、東向日が目の前に立っていて

長い影があたしを覆った。



「ごめんね。冬城さん」


優しい手、俯くあたしの頬を撫でた。


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