花が咲く頃にいた君と
名前は特別なもの。


親から初めて貰う、愛情の証。



あたしの“結女”って名前は、死んだ母親がくれた。


あたしを、産んで直ぐに死んでしまった“お母さん”


あたしがその腕に抱かれることは一度もなかった。


そんな“お母さん”とあたしを繋ぐ唯一の絆。


それは名前。



だから、昔から名前だけは大事にしてきた。

嫌いでも好きでも、名前を捨てたいと思ったことは、一度もない。


そんな名前は、あたしが“特別”と思う人だけが呼ぶことの出来るもの。


もうずっと小さい頃に、自分で決めたきまり。



それをよりにもよって、変態三人組が一人、柊 努に呼ばれるなんて…


水面下でとんでもない怒りが沸き上がった。



「ちょいちょい、そこ根倉くん。邪魔」

「消えろよ、気持ちワリィ」


柊の隣、伊吹と横峯が楽しそうな声色で呟いた。

そしてあたしの怒りに拍車がかかり、


次の瞬間、またキレた。



「お前ら一回、死ねや。この三流イケメンが!!」


捕まれてた腕を振りほどき、奴等に向かって駆け出した。


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