花が咲く頃にいた君と
「ふゆちゃん、言ってること支離滅裂」

「てか、意味わかんねぇ」

「けど…大声とか怒鳴り声とか出来んだな」



笑いの収まった横峯がポツリと呟いた。


「怒鳴り声くらい上げるし…」


よくよく考えてみると学校で、怒鳴り声を上げたのは初めてだったかもしれない。



特別周りに関心がなくて、自分から人の輪を遠ざけてきた。



人間関係はめんどうだと思ったし、女なんて尚更だ。


だから常に学校では無気力で、関心を引くことなんて一切無くて。


気付けば感情の乏しい子になっていた。



笑わない、怒らない、泣かない。


いつだって眠そうで、他人の言葉には二つ返事。


「怒るふゆちゃんが見たかったけど、こんな代償が必要だったとわ…」


伊吹が鳩尾を押さえながら立ち上がった。


「怒らせたかった?」


あたしの片眉がピクリと上がる。


「あぁそうだ。お前、マジでいけ好かねぇ」

「あんたらあたしに何の恨みがあるわけ?」


そこで押し黙る彼ら三人。


絶対に、他に理由があってあたしを、選んだこいつら。


しかし思い当たる節がない。



「自分の胸に手でも当てて考えろや、…この“人殺し”」



柊の真っ直ぐな視線。

憎悪に満ちた眼差しに、不覚にも射ぬかれた。



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