花が咲く頃にいた君と
「あたしを買ったんだから、好きなように呼べばいい」


凄く厭味っぽい。


素直になれないあたしは、こんな言い方しか出来ない。


東向日に名前を呼ばれても、何の抵抗もない。


まだ出会ってから3日しか経ってないのに、あたしはちゃんと認めてる。


東向日が“特別”だって。


買い主とか抜きにしたって、あたしは東向日が好きだ。


その東向日に名前を呼ばれるなら、


むしろ呼んでほしい。

あたしが“特別”と思うこと。



「君は買い主だと思ってるの、僕のこと?」


グッと肩を引き離されて、


繋いでいた手の平が、外気に触れてひんやりした。



至近距離で見上げた東向日。


その眉は悲しげにグッとハの字を描いていた。



傷つけた!


そう思った時には遅かった。



「僕はそんなことで、君を縛ってるつもり、ない」

「…ちがっ!」


そっと離れていく東向日、弁解出来なかった。



だって心の片隅では思っていたこだったから。



とっさに何も言葉が出なかった。



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