花が咲く頃にいた君と
「あたしを、探す?」

「そうです。この広いお屋敷で、若旦那様を含め、50ほどの使用人が、あの夜、長い時間、貴女様を探しました」



あたしは目をしばたかせた。
初川さんは東向日と同じ様な、優しい笑みを浮かべて、言葉を続けた。



「若旦那様はとって、ゆめ様はとても大切なお方なのです」



傷付けてしまった。


とても優しい人を…




「あ、あたし東向日のところ行ってきます!」



早く謝らなくては!

そんな感情に突き動かされて、あたしは駆け出した。



「ゆめ様、これだけは忘れないで下さい。貴女様がどんな立ち位置にいようと、若旦那様は変わりません」


意味はわからなかったけど、頷いておいた。


今は1分1秒が大切で、少しでも早く東向日の元へ行きたかった。



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