花が咲く頃にいた君と
階段を駆け上がり、ノックもせずに飛び込んだ。


躓きながら、部屋の中に転がり込んで、

そのまま入口付近を歩いていた東向日にダイブした。



「うわぁっ!!」


驚きの声を上げた東向日は、派手な音と共にフローリングに倒れた。


両手に抱えていた本が宙を舞い、あたしたちに降り注いだ。


「いでっ…」

その一つは、あたしの頭に落ちてきた。



東向日を押し倒したあたしは、馬乗りになったまま体を起こした。



東向日は後頭部を強打したのか、顔を顰めてその部分を擦った。


押し倒したせいで、東向日の端正な顔が見えた。


いつも見ない表情に、鼓動が高鳴る。


「な、名前!呼んで、欲しいっていうかなんてゆーか」


勢い任せに吐き出した言葉、東向日の瞳とかち合って、語尾が弱くなる。


「さっきは、ごめん。そんなつまりじゃなかったっていうか…」

「うん、分かってる」


東向日の逸らされた瞳に、不安が渦を巻いてあたしの心を覆い尽くした。



「分かってない。東向日は、分かってない」


声が震える。



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