花が咲く頃にいた君と
真っ赤になりながら、思考が停止した。


この男、今なんと言った?



肩越しに振り返ってみても、前を向いた横峯の表情は全く見えない。



「えーあーあー、あたし耳も悪いんだった」



とっさに笑って誤魔化すという選択肢を選んだ。

我ながらやるじゃん、あたし


「何百回でも耳元で囁いてやるよ。俺と付きあ…―――」

「あーあーあー!!それ以上言わんでいい」

「返事は、保健室に着いてからでいい」



そういって、横峯は足を止めた。


腹に奴の肩が食い込むような振動はましになった。


けど、横峯の背中に両手をついて、精一杯振り返ってみる。



「はっ、もう保健室じゃん」

「考えたか?」

「いやいやいやいや!無理無理無理無理!」


あたしは片手をパタパタ顔の前で振った。



「考える有余とか無かったよね?」

「考える必要なんてないだろ」

「はっ?どういう意味」


嫌な予感はしていた。


< 126 / 270 >

この作品をシェア

pagetop