花が咲く頃にいた君と
意味わかんない。
意味わかんない。
意味わかんない。



頭をゆるゆると横に振った。



さっきまであんなに、温かい気持ちだったのに。


何でこんなに話になってんの?




あたしが問い詰めたから?



問い詰めなかったら今まで通りで居られた?



“君は僕を恨んだらいいんだよ”

“僕が君のお父さんから、君を拐ったんだ”

“僕が君を欲した。ごめんね。どうしても君が欲しいんだ”

“僕が君の傍にいるから僕が君を守るよ”

“ずっと僕の傍に居るって誓って”

“君が必要だ”




さっきまで、ずっと傍に居たのに。


傍に居て欲しいっていってたのに。



重なり合う、幾つもの言葉。


全部ウソだったの?



あたしに優しくしてたのは、お金のため?




『“冬城結女”騙されんな。“優しさ”だけがすべてじゃない』




横峯の言葉が頭に響く。



何で見失ってたんだろう。


あたしが信じていたものは、一部の身内とお金だけ。



何で、何で、東向日なんて信じたんだろう。





悔しくて、恥ずかしくて、情けなくて


頬を伝う涙を制服で力一杯拭った。




それでも流れ出しそうな涙


瞼に力を入れて、流れないように瞳を細めた。



「結女…」

「呼ぶな」



握って拳、掌に食い込んで穴が開きそう。


奥歯を噛み締めて、込み上げる嗚咽を我慢した。



「最低」



唸るように絞り出した言葉は、負け犬の遠吠えにしか聞こえないだろう。

けどそれが限界、



あたしは、東向日に背を向けて走り出す。



ここに居たくない。


ただその気持ちだけを抱いて。



< 138 / 270 >

この作品をシェア

pagetop