花が咲く頃にいた君と
涙が溢れてくる。


視界が霞んでは、制服で拭いを繰り返した。



いっぱいいっぱいの気持ちを抱えて、廊下の角を曲がる。


ここを曲がれば、もうすぐ昇降口。




その一歩手前で誰かとぶつかった。



尻餅を付いた瞬間、


『痛さのせいに出来る』

…と確信したズルいあたしがいた。




「ふぇっ…」



我慢していた嗚咽が溢れて、涙はポロポロと頬を滑った。



涙が止まらない。



何でこんなに、悲しいんだろう。
何でこんなに、寂しいんだろう。
何でこんなに、胸が痛いの!?



ああそうか、好きになるってこういうことなのか。



悲しくて、寂しくて、苦しくて、痛くて、情けなくて、それでいて求めてしまう。




「その様子だと、やっと聞かされたらしいな」


聞き慣れた声が降ってくる。


両目に溜まった涙を拭って見上げた。




「ひいら、ぎ」

「冬城結女、いや“東向日結女”か」




厭らしく貼り付けられた笑み、体が震えた。




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