花が咲く頃にいた君と
「良かったな。“冬城結女”こんなに沢山の奴から“必要”とされて」

「…っ!」



握りしめた手が震える。


流した涙は止まった。




途方もない感情が押し寄せては引いていく。



あまりにリアルで無い現実、受け止めるには大きすぎる。


頭がガンガンする。



あたしはただ東向日を好きになっただけ。


なのにそれが許されないみたいに、


世界に阻まれる。




もう耳を塞ぎたい。
もう目を瞑りたい。
もう何も聞きたくない。
もう何も見たくない。



あぁ、逃げ出したい。




立ち上がったあたしは、柊を押し退けて走った。


全てから逃げるように。




「逃げたって変わらない。お前は“冬城結女”東向日財閥の唯一の跡取りだ!!」



あたしの背中に投げ掛けられた言葉


足枷が嵌められたことを、今更知った。



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