花が咲く頃にいた君と
夢を見た。



幼い身体、麦わら帽子の女の子



夢だと直ぐに分かった。



笑顔が白く霞んで見えないから。



伸ばした手、握られた白い花の冠



“良く似合うよ、結女ちゃん!”



あたしの頭にそれを乗せて、女の子は笑う。





“結女ちゃん!”




女の子は走れない。


あたしの手を引いて、とぼとぼ歩いて



真っ白に光を放つ部屋を指差した。



“お爺さん、お花あげる!”



その瞬間、女の子は走り出す。


走れない身体で…



いや、走ってはいけない体で…



『ダメ!!』



叫びたいのに声が出ない。



離れた手を、離してしまったことに、泣きそうなほど後悔した。



“ゆめ、ちゃん!ハァ!ハァッ!く、るしい…”



崩れる体、掠れる声。



慌ただしい人の動き。




“お前があいつを、人殺し!”




泣き晴らした、強く強く人を憎む瞳


それは、殺意…



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