花が咲く頃にいた君と
「…っ!!」


息を飲んだ。

声にならない悲鳴を上げて、目が覚めた。




乱れた呼吸をそのままに、揺れる瞳で辺りを探る。


けど真っ暗で何も見えない。


寒くもないのに、身体が震えて


少し開いた口、歯と歯が小刻みにぶつかり合う。


それを止める様に、かけられていた布団を、身体を捻って巻き付けた。




変な汗が身体中から噴き出して、肌に髪や服が張り付く。




そう言えば、あたしは何で、ここにいるんだろう?



「起きたかい?」



アルトの心地よい声、しかし姿は見当たらない。




けど気配が近付いて来るのが分かった。


そして、彼はあたしの横に小さな灯りを灯した。


「衣夜さん…」

「ずっとうなされてたけど、大丈夫?」



何処かの部屋の一室。

あたしはふかふかのベッドに踞り、その傍に衣夜さんは腰かけた。



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