花が咲く頃にいた君と

父の不吉な笑顔

うちの部屋は一番どんつき、203号室。

鍵なんてあってないような玄関を上げると、テレビを前に、腕枕で部屋に転がる父の背中が見えた。


「おぅ!かえり」

金髪、同じ色の顎髭、上下グレーのスエット。

無駄にテンションの高いこいつが、あたしの父親
冬城 十夜(じゅうや)
35才
職業、ホスト

「電気代が勿体ない」


あたしは部屋に上がるなり、電気を消した。
お手製の蝋燭を持ち出して、ちゃぶ台の上に置いた。


テレビの光と、蝋燭のオレンジが混ざりあう変な空間が出来た。


「おい、結女」

いつになく真剣な十夜の声に、そちらへ振り向いた。

さっきまで寝ていた十夜は、いつの間にか起き上がっていて、胡座をかいてこっちを見つめていた。


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