花が咲く頃にいた君と
「何言って…」

「結女に多額の保険金掛けて殺るか、死ぬまで結女を監禁して…」

「そこまで!」

「“するはずがない”って?あいつはいつだって本気だ。何がそんなにいいのか、金のためなら“人”だって簡単に殺す。

この10年、探りを入れてきた“東向日衣夜”って男は、そういう人間なんだよ」



冬城十夜の瞳が、悔しそうに悲しそうに細められた。


「結女は…」

「東向日衣夜に奪われた。

お前が結女から目を離した隙に、簡単にかっさらっていきやがった」


冬城十夜は髪をかきあげ、震える吐息を吐き出した。


まるで動揺する気持ちを落ち着けるみたいに。



「どうしてくれんだよ?お前なんか知ったこっちゃねぇよ。

けどなお前の“妹”はどうなるんだよ?

余命1年だっけ?
移植すりゃ助かるんだろうが。見殺しにすんのかよ?」

「それなら何とか…」

「どうやって何とかしたんだよ?」



俺の言葉は、悉く遮る。


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