花が咲く頃にいた君と
きっと言わなくても、冬城十夜なら全てを知ってる。


俺の知らない

努たちの小夜の治療費の工面の仕方。


「お前のツレが“妹”の治療費を何とか出来ると思ってるなら、それは大きな間違いだ」


冬城十夜はスーツの裏ポケットから、タバコを取り出し火を付けた。



「お前のツレ、柊努が約束を交わしたのは“東向日衣夜”だ」


肺一杯に吸い込まれた煙は、空中を漂って消えた。


「衣夜は結女の私生活に関与できない。出来るすれば、結女のバイト時間だけだ。

衣夜にも生活があるからな。

けど衣夜は結女を見張っておきたい。そこで利害が一致した柊努たちが選ばれたんだろうよ。

けど、衣夜は一銭だって出すつもりは無いぜ。端っから約束なんて破る気…いや、無いんだよ」



俺はただただ呆然と、ベッド上に座っていた。



「お前、“妹”殺す気か」



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