花が咲く頃にいた君と
古井戸のある校舎裏、この学校の七不思議スポットの1つだ。


誰も来ない筈の校舎裏に何故か設置された、寂れたベンチ。

何故か原っぱのそこは、中庭の原っぱよりも綺麗で、季節の野草が生える。



井戸の横には、真っ赤なベンチ。

某飲料メーカーの、タグが描かれ、明らかに何処からか盗んできたと思われるおぼしきもの。



俺たちは校舎の壁に寄りかかり、どこか不自然なその風景をボーッと眺めた。


「協力して欲しい」

「奪還に?」

「あぁ、結女が居なきゃどのみち話しにならないだろう」

「“いいぜ”ってか最初からその選択しかないっしょ」



ふざけた努の口調が妙に懐かしい。



「けど、一つだけ俺の質問に答えろよ」



安堵しかけた体に、再び力が入る。



そりゃ、あっさりことが運ぶとは思っちゃいない。


それなりの条件を出されるのは承知のうえだ。



けどちょっと油断してたのも、また嘘じゃない。


何を言われるのかと高鳴る鼓動。


喉を通る唾が妙にリアルに感じた。



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