花が咲く頃にいた君と
「お前が助けたいのはどっちだ?」



原っぱをそよそよと、風が吹き抜けていく。



「あぁ、間違えた。助けたいじゃないな。“欲しい”のは、か?」


ふざけた様な、挑発的の様な、努の声色。


折り曲げられた体、表情は伺えない。



“欲しい”



小夜を?

それとも、結女を?



2人の笑顔が脳内で重なり合う。



「答え、聞かせろよ」



ハッとして振り返る。


俺を見上げる視線は厭に真剣で、俺は静に前へ向き直った。




「そうだな。“どっちが欲しいか?”って質問になら、選ぶなら俺は間違いなく………―」




痛いほどの視線。


真剣な俺の言葉に、努は笑った。



穏やかな風が二人の間を吹き抜けて行った。


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