花が咲く頃にいた君と
ものの数分の出来事だった。


車に乗り込んだ奴等は、お面を剥いで、つなぎを脱ぎ出した。


「ひっさしぶりー!」


私服に戻った伊吹は、一番後ろの座席から、体を乗り出した。

お面を斜めにかけた伊吹は元気にあたしへ笑いかける。



「相変わらず湿気た面してんな」



ハッと鼻で笑うのは、スポーツタオルを肩にかけた横峯。



あたしは奴等を疑いの眼差しで見つめた。


さっきはとっさに、柊の手を取ったけど、状況はまったく掴めていないし


あたしを“下僕”と称した奴等を100%、信頼することは出来ない。



「何で…」


あたしは視線を下に落とし、膝の上でスカートを握った両の拳を見つめた。


「勘違いすんじゃねぇよ。俺等は“お前”を助けに来たわけじゃねぇ

俺たちが救いたいのは、お前が“殺そうとした女”だ」


隣から冷めた柊の声が聞こえた。



「どうゆう意味?」


ちらりと柊を盗み見る。


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