花が咲く頃にいた君と
「あたし、誰かを、こ、殺そうとなんてしたことない」

声が震えた。


“死ね”なんて簡単に言ってた昔が信じられない。


あたしを恨むその瞳が向けられた時、安易に


“殺す”なんて言葉が吐き出せない。



「もう、お前黙れ。

イライラして俺がお前を殺しそうだ」


その瞳は本物だった。


怒りに血走った瞳は、あたしを見ないように、正面をジッと見つめていた。




一瞬、息が詰まって、恐怖に握り締めた掌に汗をかいた。


怖い


昔は感じなかった感情。

死ぬことを恐れなかったあたしが、無意識に今は“生”にすがって


向けられる憎悪の感情に恐怖を感じてる。


生きていても無意味な存在のあたしが


“生”にすがっている。
なんておこがましいのだろう。


自嘲の笑みが浮かんだ。



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