花が咲く頃にいた君と
「心臓が弱いんだ。俺達のお姫様」


重い空気の中、苦笑い気味の声がその空気を和らげた。


恐怖から逃げるように上げた視線

伊吹が背もたれに腕を乗せて頬杖をついた。


「とおる!」

「いいじゃん。こいつにも“知る権利”はある」


柊の言葉にも臆すること無く、伊吹は話を続けた。



「生まれつきだった。もうずっと彼女は独りで出歩いたことはないよ。

何をするのも、誰かと一緒。運動なんてもっての他!

走ったことなんてもう、ずっとないだろうさ。なんの自由も無い。俺なら発狂するな。

なのにその子はいっつも笑っててさ。

“いつかこの子を、自由にしてやろ”ってずっと俺たちは思って生きてきた。

普通の女の子をさせてあげたい。


けど病気を治す方法は手術しかない。それには莫大な費用がかかる」


何となく話は掴めた。


何だ、こいつらも東向日と一緒なのか。



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