花が咲く頃にいた君と
「結女は頭いいな~。父ちゃんは嬉しいぞ!」


そりゃ、こんなヤンキーみたいな父親を持ったら、嫌でもしっかりしてしまうはボケ!

「それでな、結女」

「まだなんかあんの?」

あたしはもう十夜との会話に嫌気がさして、押し入れからぺったんこの布団を引っ張り出した。


「うん。結女こっち向け」


十夜の言葉に布団を抱えたまま渋々と振り向いた。


十夜は今までにないくらい不吉な笑顔を浮かべていた。


その笑みに背筋に何か寒いものが走った。


「結女を売っちゃった!」

抱えてた布団があたしの足の上に落ちた。

押し入れに入れてたせいかちょっとひんやりした。


ニンマリ笑う十夜。
固まる、あたし。


「はっ!?何言ってんの?」


あたしの声が震える。

最後はもう空っぽな心が、夢か現実かだけでも確認しよとしていた。

十夜はニンマリから、ニコニコと笑みを爽やかに変えて深く頷いた。


「意味わかないんですけど~!!!」


あたしは夜中だということも忘れて、力一杯叫び声を上げた。



こうしてあたしの、

平凡で可もなく不可もない生活は、突如幕を閉じた。


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