花が咲く頃にいた君と
「久しぶり?」


…―――会いたかったよ


何とか浮かべた笑顔も、絞り出した言葉も

上手く出来ただろうか。


口をついて出そうになる言葉も、東向日に駆け出そうとする体も

何とか理性で押し止めた。



利用されてる。


それを知っているのに、東向日に怒りの感情が湧かない。


ただ会いたくて、会いたくて堪らなかった。


きっと東向日には、迷惑な感情だ。



「ちょっと、話そう」

差し出された手に、あたしは首を振った。



本当は東向日と話したかったけど、また“お金”の話や“妹”の話をされては

堪ったもんじゃない。


“お前は利用されてるんだよ”


そんなこと再確認したくないし、遠回しに聞かされたくない。


「ここ、朋哉さんが入院してる病院。
前に言ったよね。朋哉さんの前に君を………」

「言わないで!
…ちゃんと、会うから」


東向日の言葉を遮る様に、ヒステリックにあたしは声を上げた。



また、心が冷めて行く気がした。


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