花が咲く頃にいた君と
何がなんでも連れ戻す。

「時間がねぇ!早くしろ!」


焦っていた。
必死だった。

冬城が手を取らないのも、こうしてる間にも小夜の命が消えていくのも。

気がきじゃなくて、一か八かで、如月の名前を口にした。


「如月が待ってる!

俺等と一緒に来い!


如月に会わせてやる!」

顔を上げた冬城は泣き出しそうな顔で、その瞳には一瞬光が宿っていた。

「如月の元に帰ってこい!」


あと一歩だと思って叫んだ言葉、冬城の小さな手が俺の手と重なった。


へたすりゃ、小夜より小さいかもしれない。


病気の小夜ですら細いのに、冬城の指はそれ以上に細い。


よくよく見れば顔色も悪いし、少し痩せたのかもしれない。


けど今は一刻も速くここから立ち去るのが先決で、そんなことに気を取られている暇はなかった。


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