花が咲く頃にいた君と
「あー、はいはい。気が向いたらね」

あたしはゆっくりと瞬きをして、視線を教室に戻した。

「はぁ~、カッコいい」

甘いため息をつきながら、目の前の女、改め、日高 湊は“伊吹くん”とやらに陶酔していた。

クラスの大半の女子は、伊吹派、柊派、横峯派に3分割される。


「飽きないねぇ~」

「その内、飽きるわよ」

スパイラルパーマ一歩手前の長髪を高い位置で1つに結い、明実 智代は音楽雑誌片手に、興味無さげに呟いた。

智代とは対象的な、お下げに眼鏡、スカートは膝下1センチ。模範的優等生、保泉 優花は呟いた。

「どうでもいいわ」


無気力、無関心、平々凡々なあたし、冬城 結女は目の前で気持ち悪くも悶える日高を視界に入れないように、自分で作った弁当へ視線を移した。



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