花が咲く頃にいた君と
横を見上げれば、女の子同様、戸惑いと驚きに呆然と立ち竦む東向日がいた。


「お、兄ちゃ……」


女の子は絞り出す様に呟いて、その頬にポロリと涙を溢した。



東向日は恐る恐る一歩、二歩、歩み出たが


次の瞬間には女の子に駆け寄って、強く強くその腕で抱き締めた。


「会い、たかった…会いた、った………」


東向日は苦しそうに声を絞り出しながら、女の子の肩へと顔を埋め込んだ。



「お兄ちゃん…私もよ!会い、たかった…」


女の子の頬には次から次へと涙が伝って、東向日と良く似た白磁の肌を濡らしていく。


東向日の背中に回された女の子の手は、強く強く服を掴み

もう、お互いがお互いを離すまいとしているようだった。



「安心しろ、もう大丈夫だから。お前は死ななくていい。俺たちが助けてやるからな」

一頻り抱き合った二人は額をくっ付け、東向日が女の子の頬を指で拭った。


まるであたしの存在なんて、無いみたい。



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