花が咲く頃にいた君と
消えた方がいい。

あたしが部屋を出ていこうと決めた瞬間


「結女ちゃん!」


女の子は少し大きな声を上げた。


二人から向けられた視線。


やっぱり並んで見ると、良く似ている。



「結女ちゃん、だよね?」

「小夜、知ってるの?」

「うん。だって、結女ちゃんは私の初めての

友達だから」



“友達”



頭の中で、何かが弾けた。



すごい勢いで駆け抜ける記憶


怖くて蓋をしたはずだったのに、
全部、全部、思い出した。


思い出にも過去にも出来なかった記憶

いつしか降り積もる日常で蓋をしたのに



女の子は、小夜は
それをやすやすと押し退けて

拾い上げて、あたしを“壊そう”とする。



「結女ちゃん!」

「結女!!」


ぐらついた体を何とか扉で支え

心配気に声を荒げた二人に手をつき出した。



「大丈夫、心配いらない」



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