花が咲く頃にいた君と
全部、全部、思い出した。


小夜との出会いも

柊に“人殺し”と言われる意味も

そして小夜を忘れようとした理由も。


全部、思い出した。



「結女ちゃん、大丈夫なわけないわ!顔真っ青よ!」

「結女!大丈夫?」



小夜から離れた東向日は、あたしを支えようと手を伸ばしたが

あたしはそれを払いのけ、拒絶した。



「…結女?」

「触らないで」


あたしはフラりと扉から離れて、ふと小夜を見た。



「結女ちゃん。どうしたの?目が怖いよ…」


麦わら帽子の良く似合う女の子。


昔、同じこと言われたね?


悲しそうに、あたしの瞳を見つめる女の子は

とても無垢な瞳で、あたしに癒しと安らぎを与えてくれた。


あたしは側に居るだけで、その瞳に見つめられるだけで

優しい気持ちになれたよ。



…けど

「小夜に出会うべきじゃなかった」


心を取り戻したあたしには、小夜は大き過ぎたから



「…どう、して?」

「ごめん」


小夜が壊れてしまうことを恐れて、それ以上に狂いそうになった自分が怖いの。


「そんな寂しいこと、言うの?」


小夜が泣きそうに眉を下げて、あたしをジッと見つめている。


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