花が咲く頃にいた君と
「はい、あの時の…」


あたしは言葉に、詰まった。


「おじちゃんに、花冠を教わった…」

「もう一人の子は?元気か?」


今度はあたしが声を上げて、泣く番だった。


優しいお爺さんの言葉に


助けて、助けて、



あたしの大切だと思う人がみんな居なくなっていく。


言い知れぬ恐怖に、あたしはお爺さんにしがみついた。

“助けて!”と叫びながら



そして気づいたら、意識は深い記憶の底に沈んでいた。




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