花が咲く頃にいた君と
その日は雨だった。


そして苛めを受ける日々で最も酷い1日だった。


今思えば大したことじゃないし、どんなことをされたのかなんて覚えてない。


けどあの日、あたしは生き死にを考える程に傷付いていて

それは目にもしっかり現れていて



「結女ちゃん、目が怖いよ?」

覗き込む、小夜の瞳には心配の色しかなくて

あたしはそれを、虚ろな目でみていたんだと思う。


「どうしたの?どっか痛いの?」


小夜は優しかった。

その温かな手があたしに触れた瞬間。


あたしは声を上げて泣きわめいた。


小夜は突然のことに驚いて、おろおろしてたけど

ずっと

“大丈夫?”“どっか痛い?”と話しかけてくれた。


あたしは、自分より小さな女の子に

学校で苛めにあってることを話した。


誰も口を聞いてくれないことや、物を隠されること、陰口を叩かれること


全部、全部、吐き出した。



小夜はそれに関して何も言わなかったけど

あたしの胸を撫でて

“痛いの、痛いの、飛んでいけー”

とおまじないをかけてくれた。



ただのまじないなのに、心がスッと軽くなったように思えた。


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