花が咲く頃にいた君と
「結女?」

「うん」

「そうか。手に持ってるのは、シロツメクサ?」

「花冠を作ってて」

「上手く出来そうか?」

「作り方わかんない」


あたしは麦わら帽子を見つめて俯いた。

上手く作れたら、きっと小夜は喜んでくれる。


なのに、あたしは喜ばせてあげられない。


「作ってあげよう?」

「え?おじちゃん作れるの?」

「あぁ、昔、娘に教わったんだ」



お爺さんの初めて笑った瞬間だった。

あたしはもうお爺さんを危険な人だとは思わなかった。


お爺さんの手を引いて、小夜の元に戻り

花冠の作り方を教えてもらった。


あたしたちは子供な分、凄く不器用で、なかなか上手く出来なくて


その日は完成しなかった。


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