花が咲く頃にいた君と
小夜はきっと今まで、何かを独りで成し遂げたことがなかったんだと思う。


そして、何かを成し遂げて褒められたことがなかったんだと思う。



あんなに興奮した小夜を見たのは初めてだった。


花冠を独りで作り終えた

達成感と高揚感
そして褒めてもらいたいと思う、人一倍強い思い。


次の瞬間、小夜は駆け出していた。



絶対走ってはいけないその体で、小夜は駆け出したのだ。



「小夜ちゃん、待って!走っちゃダメ!」


あたしは目を見開いて、その場に立ち上がった。

長い髪を揺らしながら走る小夜の後ろ姿に、日頃から心配する、三人のことを思い出した。


“小夜は絶対運動させたらダメなんだ”


そしていつだったか怖い顔で、努の言った言葉が頭の中でリフレーンする。



止めなくちゃ!


それは簡単な答えだった。


けど、伸ばした手は無情にも空を切り


あたしも小夜を追いかけた。


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