花が咲く頃にいた君と

ぐ~。

それでも腹は空く。


あたしは肩からずり下がるTシャツを戻しながら、トースターにパンを突っ込んだ。


いつもの朝と何ら代わりはない。

あたしは自分にそういいきかせ、ベランダで布団を干した。


雲1つ無い空、周りの家が邪魔をしてパノラマでは空を仰げない。


けど屋根と屋根の間から見える青い空、鳥たちが飛び交って爽やかな朝を告げる。


ベランダに敷布団を掛けている最中に、トースターが軽やかな音を立てた。


掛布団は朝食を食べてからにしようと思い、部屋の中へ戻った。


香ばしい匂いが広がっていた。


浮き立つ心を抑えて、オレンジジュースとイチゴジャムを慌てて用意した。


『うるさい…』

「えっ?!」


ベランダから風が吹き込んで、部屋の空気をかき乱す。


『結女はそういうとこ、まだまだ子供だな』


振り返ると同時に消えた声に、幻聴だということを思い知らされる。



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