花が咲く頃にいた君と
数m走った所で、小夜は膝からカクンと倒れ

心臓の辺りを握りめて踞った。


「小夜ちゃん!」


それは、まるでドラマのワンシーンを見てる様な、スローモーションで


あたしにはどうすることも出来なかった。



小夜の直ぐに事態に気付いた看護師達が、小夜を担架に乗せて治療室に運び込んだ。


あたしはただ呆然と立ち尽くすしか出来なかった。



治療室から小夜が出てきたのは、倒れてからそんなに時間の経たない頃だった。



酸素マスクを付け、腕に沢山の管を通した小夜は苦し気に呟いた。


「努お兄ちゃん、に、怒られる。怒られたくないよ」


本当はそれだけで怖かった。


人間があんな風になって、ベッドに横たわって居る光景は初めてだったから


それに小夜が、あたしの知らない人みたいで

あたしは初めて理解した。


小夜の病気は、とても大変なものだと。



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