花が咲く頃にいた君と
あたしは途端に怖くなった。


もう小夜はあたしには無くてはならない存在で

その小夜が明日には居なくなってしまうかもしれない。


あたしにはまた、救いの無い日々だけが残される。


そればかりか、心には大きな穴が空いて

あたしの心は日々の苛めと、小夜の死に深く傷付いて


それこそあたしは狂ってしまうかもしれない。



“人殺し”と言われることに対して、少しは胸がえぐられる様な、思いをしたけど


明日、小夜が居なくなってしまうかもしれない

という恐怖よりはましだった。



沢山小夜はあたしに笑いかけてくれた。


その幸せな時間だけあれば、あたしは何とかなりそうな気がした。


“小夜は死んだ”


そんな現実を見るかもしれない明日よりも、楽しかった時間を糧に苛めを乗り切る方が


あたしの恐怖も和らぐ気がした。



「結女ちゃん、ごめん、ね…」

「大丈夫?また、明日ね」


だから、その日を最後にあたしは小夜の前に現れなくなった。


“また、明日ね”

なんて嘘をついて、いつもと同じように病室を後にしたんだ。



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