花が咲く頃にいた君と
再来

目覚めの時

それはとても温かな夢だった。



次に目が覚めた時、見上げた天井は見慣れないもので



はっきりしない意識の中で、室内を視線だけで見渡した。



「…結女?」



その人はあたしを覗きこんで、今にも泣き出しそうな顔で呟いた。



「十夜…」


声が掠れて上手く出ない。



「お前、3日も意識無くしてたんだぞ。

心配させんなよ。この親不孝者が…」



怒っているはずの言葉はどこまでも優しく、あたしはまだ夢を見ているのかと思った。



ゆっくり目を閉じると、頬に温かな温もりを感じる。


「あったかい…」


それは十夜の大きな掌で、あたしの頬は自然と緩んむ


久しぶりに感じる、慣れた温もり



ゴツゴツした感覚が懐かしくて、自分から擦りよった。



< 225 / 270 >

この作品をシェア

pagetop