花が咲く頃にいた君と
まっ、この話は置いといて…


あの人は俺と一緒に居ることを選んだよ。


“今日から私が、貴方の家族になります”



最初で最後の“恋”だったよ。

俺はな、産まれて初めて人を好きになったんだよ。


こんなに愛しいと思うのも
こんなに恋しいと思うのも

全てあの人にだけなんだ。




…――――そう語る十夜の瞳は、しっかり“男の人”でまるで、知らない人の様だった。



色々障害はあったな、けどそんなの屁でも無かったぜ。


暫くしてお腹の中に、お前が結女がいることが解ったんだよ。


けどな正直、子供なんて欲しくなかった。



あの人は身体が弱くて、出産に耐えられるかわからなかったからだ。


医者にも考え直した方がいいと言われた

俺はあの人さえ居てくれれば、それで良かったから、何とか説得しようとしたけど、


逆に説得されちまった…。




…――――十夜は苦笑いし、あたしに首を傾げて見せた。

指に引っ掻けた煙草はチリチリと燃えて、灰が音もなく病室の白い床に落ちた。


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