花が咲く頃にいた君と
あたしとお母さん
「結女…」
昔話を聞き終わった丁度その時、病室の扉は開いた。
しゃがれたお爺さんの声が、とても静かなこの部屋に響いた。
「お爺さん」
車椅子に乗ったお爺さんの膝の上
枯れて今にも粉々になってしまった花冠が、ソッと乗っていた。
「あの子なら心配いらない。ちゃんと手術を受けられる」
「ありがとう、…ございます」
あの頃の口調で、つい話してしまいそうになる。
「誰かに泣き付かれたのは初めてだ」
お爺さんの口許には笑みがのせられ、声もどことなく楽しそう。
「私の人生は後悔ばかりだった。けれど最後に孫の頼みを聞いてやれて、良かった」
「最後だなんて…」
「もう、私はいつ死ぬか解らないからね。誰かのお願いを叶えるのは、これが最後だろう」
「ごめん、なさい」
自然と口から溢れた言葉。
みんなが望んでいる。
「“お母さん”じゃなくて、あたしでごめんなさい」
みんな、あたしじゃなくて
“お母さん”を望んでる。
昔話を聞き終わった丁度その時、病室の扉は開いた。
しゃがれたお爺さんの声が、とても静かなこの部屋に響いた。
「お爺さん」
車椅子に乗ったお爺さんの膝の上
枯れて今にも粉々になってしまった花冠が、ソッと乗っていた。
「あの子なら心配いらない。ちゃんと手術を受けられる」
「ありがとう、…ございます」
あの頃の口調で、つい話してしまいそうになる。
「誰かに泣き付かれたのは初めてだ」
お爺さんの口許には笑みがのせられ、声もどことなく楽しそう。
「私の人生は後悔ばかりだった。けれど最後に孫の頼みを聞いてやれて、良かった」
「最後だなんて…」
「もう、私はいつ死ぬか解らないからね。誰かのお願いを叶えるのは、これが最後だろう」
「ごめん、なさい」
自然と口から溢れた言葉。
みんなが望んでいる。
「“お母さん”じゃなくて、あたしでごめんなさい」
みんな、あたしじゃなくて
“お母さん”を望んでる。