花が咲く頃にいた君と
「わかんないよ!!!そんなこと言う十夜なんか、嫌いだ!!」


十夜へ言葉を吐き捨てると、ボロアパートを飛び出した。




行く宛なんかなかったけど、思い浮かんだのは


あの優しい笑顔だった。



東向日、会いたいよ。

…助けて



初めてあのお屋敷に行った日、行方不明のあたしを必死に探してくれたよね。


二日目も、勝手に学校へ行ったあたしがまた家の中で、迷子になってるんじゃないかって


ずっと探しててくれたんだってね?



後から聞かされたよ。




あの時みたいに、迎えに来てよ。

呼吸を乱して、一生懸命走って、あたしを捜し出してよ。




今じゃまったくあたしは、必要の無い人間なのにね。



やっぱり頼ってしまうよ。




結局辿り着いたのは、東向日の元ではなく

下宮比さんのバーだった。



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