花が咲く頃にいた君と
花が咲く頃にいた君と

新しい家

新しい家は、新築の一軒家。


屋根から一階まで吹き抜けで、何処からも光が溢れている。



元々、あのボロアパートにそんなに家具を置いていなかったあたしたちは


こんなに広い家で、並べる家具がないことに、笑ってしまった。




「広い家…」

「何もねぇな。明日辺り、家具でも買いに行くか」



何もないリビングで、二人して寝転がり、吹き抜けの空を見上げた。



「あれ、絶対そうじするの大変だよ」

「月一で屋根に昇って拭くか?」



特別なガラスを指差しながら、これからあれをどんな風に掃除するのか

そんな現実的なことしか考えてなかった。




「結女、もう何処にも行くな」




温かい光が降り注ぐなか、十夜があたしの手に指を絡めた。


そんな言葉をききながら、あたしの頭の中は、やっぱり掃除のことでいっぱいだった。



「十夜は辛くない?あたしと居るの?」



何でこのタイミングにこれを聞いたのか

自分でも良くわからなかったけど、聞いておきたかった。


多分、十夜を試したんだと思う。



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