花が咲く頃にいた君と
「嫌いな人間と一緒に居れるほど、俺は器用な人間じゃないからな」



光を見つめたまま、答えを聞いて


手に絡まった指を強く握った。




「結女は優香さんに、そっくりだからな。俺は嬉しいよ」




あの日から十夜は“あの人”とは言わなくなった。




毎日の様に、お母さんの話をしてくれる。


それだけであたしの胸は、花が咲いたように明るくなる。






あたしたちは歩きだした。



辛くても悲しくても、ずっとそこで立ち止まっているわけには行かないから。


それがあたしたち生きている人間の義務。




これは偽善でもない、エゴでもない。


お母さんの記憶を共有するあたしたちの中に、ちゃんとお母さんは生きている。



だから、前に進むんだ。

どんに辛いことでも、悲しいことでも、それを過去にして“思い出”に変えて。



あたしたちは、生きてるんだから。


笑顔の明日を迎える為に…



あたしたちは、今日を生きていく。



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