花が咲く頃にいた君と
綺麗だなー。



なんて思いながら、カメラ越しに、並木を見つめてみたりする。

桜吹雪が待って、何枚も何枚もレンズの視界を遮り、漸く見えた世界には


こちらに向かって歩いてくる、ピンぼけした人の姿。



春には似つかわしくない、影を背負ったその姿に、儚ささえ感じて


慌ててピントを合わせた。




桜とその人、きっといい絵が撮れる。



だけど次の瞬間、その人は立ち止まりこちらをジッと見つめたのだ。




あたしはドキッとして、カメラを構えるのを辞めた。


危ない、危ない。

あたしもうちょいで犯罪者になるところだった。



あたしはその人とスレ違うのが気まずくて、踵を返す。



桜並木を抜けて、少し入り組んだ住宅街に足を伸ばす。



道端に咲いた花や
野良猫を追っかけてみたり
住宅街から見える空を撮ったり


自由気ままにレンズを向ける。



最近の休日はだいたいこんな感じだ。



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